・【冷凍食品コラム 山本純子】『フローズンアワード2019』320万票の頂点はニチレイフーズ「本格炒め炒飯」

 毎年年末の恒例イベント、日本アクセス主催の「フローズン・アワード」結果発表・表彰式が行われた。昨年で第7回を迎えた消費者参加型のこの企画は、「冷凍男子・冷凍女子 総選挙2019」と銘打って、消費者からの投票を募っていたが、なんと、2019は前年の2倍の323万票の投票が集まった。回を重ねるごとに、関心が上がっている。
 冷凍男子・冷凍女子は、エントリーした冷凍食品メーカーの社員を指す。各社の社員が自社製品を熱く語るpR動画を制作し、ネット上に公開。消費者はそれを観て投票する、という趣向である。
 景品は、従来の『毎日100名に冷凍食品詰め合わせプレゼント』ではなく、毎日『現金1000円』としたことも、消費者の心に響いた模様。全ての動画を観た人限定で賞金が当たる企画も投票数を引き上げたようだ。

冷凍食品6部門のうち
5つでニチレイフーズがトップに

 今回の冷凍食品エントリーは、6部門合計106品。その中で驚いたことに5部門の1位がニチレイフーズ商品だった。また、新商品部門でも第1位にニチレイフーズの「たいめいけんドライカレー」が輝いた。
 各商品にそれぞれ動画が制作されたが、ニチレイフーズは社員を登場させつつも、まるでプロが出演するTVCMのように力を込めて動画を作ったという点が注目を集めたようだ。
 アワード表彰式後の懇談会では、動画に登場したメーカー社員の中から数名がコメントを述べた。ニチレイフーズ「たいめいけんドライカレー」に登場したのは、新入社員の吉沢さん。動画は「いつもはクールな吉沢も、、、」とナレーションが入り、突然にっこり「美味しい!」と締める完成度の高い内容。吉沢さん曰く、「いつもはニコニコしているタイプなんですが、クールを演じました」。消費者に近づくために、どれだけ努力して動画を制作したかが微妙な得票差になったのだと認識した。
 今どきは「ユーチューバー」が小学生の「なりたい職業」に挙げられるように、「動画」を山ほど日常に観ている消費者は、それがおもしろいか否か、瞬時に判断する能力を身に着けている。消費者目線でおもしろく、楽しく、そして訴求する力があるかどうかが、勝敗の分かれ目となった。

山本が選定マニア賞5品
新商品に焦点

 審査員を務めさせていただいている山本は今年も「マニア賞」を選出した。有名・売れ筋だけでなく、知る人ぞ知る隠れた名品にスポットを当てよう、という企画である。私が選んだ5品は新商品が中心になった。チャレンジするメーカーを応援したいという意味も込めている。
 選んだ商品は、ワンプレート商品で孤軍奮闘する日本製粉の「よくばり御膳 五目ご飯と鶏と野菜の黒酢あん」、2019秋発売でヒット商品となった日本ハム冷凍食品「炭火焼 牛カルビ焼肉コチュジャン入り旨辛たれ」、新機軸商品として発売された明治の「満足丼 濃厚オムライス」、袋のまま食べる新しい食べ方提案をしたマルハニチロ「WILDish焼豚五目炒飯」、こんな商品が欲しかったというニーズにはまった日本アクセスの「Delcy カットレモン」の5品。
 嬉しく思うのは、応援したくなる新提案が毎年必ずメーカーから出てくる、開発意欲旺盛な業界であることだ。

もっと消費者に
近づいていこう

 さて、フローズン・アワードイベントを終えて思うのは、もっともっと消費者目線で考え、より近くに寄り添うことで、家庭用冷凍食品は新たなステージに入れるのではないだろうか、ということ。
 令和の時代は、『冷』で『和む』。作る側も食べる側も、より良い食事とは何かを共に考えることができる時代にと願っている。

㈲冷凍食品エフエフプレス 
取締役 山本純子
冷凍食品の報道に携わり38年。2015年、長年編集長、主幹と務めてきた専門紙から独立、冷凍食品専門サイトの「冷凍食品エフエフプレス」を運営する。テレビにも出演するなど、多角的に冷凍食品情報を発信している。フローズンアワードの審査員を務めている。

(月刊誌総合食品2020年1月号より)

Posted at - 2020/01/07(火曜日) 16:55:00 -